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建機活用術

2016年9月14日

建機寿命延長のポイント:油圧コンポーネント編

"建機寿命延長のポイント"と題し、4回にわたって建機寿命を延長するための秘訣をご紹介しています。今回はその第3弾で、「油圧コンポーネント編」です。

はじめに

建設機械分野では、「油圧」とは「仕事をするための圧力を持ったオイル」のことで、その圧力を離れた場所に伝え、人間の何倍もの仕事をさせるために使用されます。現在、建設機械のほぼすべての作業装置には油圧システムが採用されています。

たとえば、バケットやブレードを動かしたり、走行用の足回りを回転させたりすることにも油圧を使用しています。

今回は、この油圧コンポーネントの寿命を延長するためのポイントをご紹介します。

はじめに

油圧コンポーネント

油圧システムは主に図のような油圧コンポーネントで構成されています

油圧システムの心臓部である油圧ポンプをエンジンの力で動かし、タンクからの作動油を吸込/吐出します。そして、油圧ポンプから送られてきた作動油を、油圧バルブでコントロールし、油圧シリンダでブームやバケットを動かしたり、走行モータで足回りを回転させたりします。

油圧コンポーネント

油圧コンポーネントの寿命低下要因

油圧コンポーネントの寿命低下の主な要因となるのは、コンタミネーション(コンタミ)による作動油清浄度の低下です。

特に近年の建設機械は、高度な電子制御や、精密に機械加工されたさまざまな油圧コンポーネントが使用されており、コンタミの影響を受けやすい構造になっています。

油圧コンポーネントの寿命低下要因

1 油圧システムから発生する摩耗金属粉

油圧コンポーネントは、金属同士が強い力で接触しながら動いているので、摩耗はわずかながら進行し、摩耗金属粉を発生させることになります。摩耗金属粉は、コンポーネントの表面に傷をつけ、作動不良や作動油漏れ等の不具合を引き起こす要因となります。

2 空気中から作動油タンクに侵入するコンタミ(ホコリや砂)

ホコリや砂といったコンタミは、タンクの通気孔を通過して、空気と共に作動油タンクに侵入することもあります。その後、コンタミは作動油タンクから油圧システムへと侵入し、多くの部品を傷つけてしまいます。

3 作動油の温度上昇に伴う酸化物生成によるコンタミ

作動油は、空気中の酸素と化学反応して徐々に酸化し、酸化物を生成します。この酸化物は、配管やフィルタの目詰まり等の不具合を引き起こします。作動油の酸化スピードは、作動油の温度が高いほど早くなりますので、適正な作動油温度の管理が大切です。

油圧コンポーネント寿命延長のポイント

油圧コンポーネントの寿命を延長する方法は非常にシンプルです。それは、清浄度の高い作動油を使用することです。
作動油の清浄度を改善・維持する3つのポイントをご紹介します。

定期的な作動油清浄度の測定

SOS(オイル分析サービス)SOS(オイル分析サービス)
お客様の機械から採油した油をオイル分析装置でデータ化。コンポーネントの摩耗状況や作動油の劣化度・清浄度を分析し、コンポーネントに重大な不具合が発生する前に、潜在的な問題を発見することができます。

SOS(オイル分析サービス)パーティクルカウンタ(簡易汚染度計測器)
作動油の清浄度(コンタミの数)を測る、「見える化」する装置。機械に影響を及ぼすコンタミサイズは5~10ミクロンで、それがオイルにどのくらい混入しているかを数字で確認できます。ブレーカや破砕機などのアタッチメントを使用する機械はコンタミが発生しやすく、コンタミによる油圧ポンプ破損などが起こるので、アタッチメントを使用している場合は特にお勧めです。

定期的なフラッシングの実施

定期的なフラッシングの実施コンポーネントの寿命を延長させるためには、定期的にフラッシング(ろ過)を実施し、作動油の清浄度を維持することが大切です。ポンプやシリンダ等の主要コンポーネントを交換した際は、特にフラッシングをお勧めします。それは、部品交換の際にコンタミが侵入してしまう可能性が高く、また新品コンポーネントは初期摩耗により摩耗金属粉が発生してしまうためです。機械の調子を整えるには、フラッシングが効果的です。

適正なフィルタの使用

適正なフィルタの使用フィルタは機械稼働中にコンタミを捕捉し、作動油の清浄度を改善・維持します。しかし、目の細かい高性能なフィルタは、コンタミを多量に捕捉するので、定期点検時期前にフィルタが目詰まりを起こしてしまう場合があります。特に新しいコンポーネントを取り付けた機械に起きやすいので注意が必要です。

フィルタの目詰まりを避けるために、目の粗いフィルタに交換してしまうと、コンタミを多量に通過させてしまい、コンポーネントの早期摩耗や不具合を引き起こしてしまいますので、必ずCAT純正フィルタをご使用ください。

建設機械の中を流れる作動油は、人間の中を流れる血液と同じです。もし、私たちの体の血液にウィルスが入り、それを放置すると取り返しのつかないことになってしまいますね。機械も人間と同じです。

油圧コンポーネントは、作動油の清浄度を高いレベルで維持している限り、耐久性・信頼性の高い部品です。今回ご紹介しました3つのポイントを実践し、油圧コンポーネントの寿命延長とランニングコスト低減にお役立てください。

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