Cat 建機 研究所

「大切な機械を故障なく長く使いたい！でも、そのために何をすればいいの？」このようにお悩みのお客様のために、今回より4回にわたって"建機寿命延長のポイント"と題し、建機寿命を延長するための秘訣についてご紹介します。第一回は「燃料システム編」です。

• 第1弾：建機寿命延長のポイント： 燃料システム編
• 第2弾：建機寿命延長のポイント： エンジン編
• 第3弾：建機寿命延長のポイント：油圧コンポーネント編
• 第4弾：建機寿命延長のポイント：オイル清浄度管理編

はじめに

建設機械の排出ガスに対する規制が世界各国で行われています。

日本国内ではオフロード法を代表とする排出ガス規制が施行され、これまでに各建設機械メーカは排出ガス中に含まれるPM（粒子状物質）やNOX（窒素酸化物）などの汚染物質を低減したエンジンを導入してきました。

2011年より開始の次期排出ガス規制によって、さらなる汚染物質の低減が求められています。

近年のエンジン燃料システム

近年の排出ガス規制に対応するために、CATは最先端の技術を導入してきました。その中で代表的な技術が、電子制御方式の燃料噴射装置（ユニットインジェクタ）です。

これは250MPa以上の超高圧の燃料噴射で噴射タイミングを電子的に制御することによって、排出ガスに含まれる汚染物質を減らしています。

また最近では金属製の頑丈なパイプ（レール）に高圧燃料を蓄えた後、インジェクタで噴射を行う「コモンレール燃料システム」も導入されています。

このように高圧化するエンジン燃料システム部品の寿命を延長するために特に注意しなければいけないことは次の3点です。

• ・燃料に水を混入させない
• ・燃料にコンタミ（ホコリや砂）を混入させない
• ・インジェクタへの燃料供給圧力を低下させない

燃料システムの寿命低下要因

水

燃料は単に燃焼させるだけでなく、燃料システム構成部品の潤滑油の役割も果たしています。

もし燃料に水が混入していると、部品表面の油膜がなくなり部品同士が直に接触するため、非常に大きな摩擦熱が生じます。こうなると燃料システムに致命的な故障が発生してしまいます。

特に高圧化した燃料システムにおいては部品同士の隙間が極端に狭くなっており、わずかな水も無視できません。

コンタミ

目に見えないほど非常に小さなコンタミであっても、燃料システム構成部品の寿命に大きな影響を与えます。これらは、構成部品の隙間に入り込んで傷を付け、高圧燃料の漏れを発生させます。

もし燃料漏れが起きると、十分な量と圧力の燃料噴射が行われなくなり、結果としてエンジンの出力が低下し、機械の力不足となってしまいます。

低い燃料供給圧力

燃料システムが正常に作動するには、インジェクタへの燃料供給圧力を十分確保する必要があります。

圧力が低いと、正しく燃料が供給されず、燃料システム内部に気泡が発生してしまいます。燃料中に発生した気泡は燃料が衝撃を吸収する役割を阻害します。

たとえば、燃料噴射の際にインジェクタの先端にかかる衝撃力は、気泡が混入していない時と比べ1.5倍以上になってしまいます。こうなると時間の経過と共に衝突部分における疲労破壊が進行し、最終的にインジェクタの不具合につながります。

燃料システム寿命延長6つのポイント

燃料システムにおける寿命延長の鍵は、燃料に水やコンタミを混入させないこと、そして燃料供給圧力を低下させないことです。
これは基本的な燃料システムのメンテナンスを確実に実施することによって実現できます。

メンテナンスを怠ることは機械の性能と寿命に直接大きな影響を及ぼします。今一度この重要性を認識して、日頃の機械管理にお役立て下さい。